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第8回TRIZシンポジウムwebリポート@早稲田大学 (弊社は「教育の究極の理想解は?」を発表)

 2012年度の第8回TRIZシンポジウムは、9/6〜9/8に早稲田大学にて開催されました。TRIZ協会によると、参加者は、企業、大学、コンサルタント、個人の立場で、約127名でした。その中には、韓国、フランス、ブラジル、イスラエル、ヨルダンなど海外からの20数名が含まれています。昨年は、東日本大震災の影響で、海外からの参加者が激減してしまったようですが、今年は、海外からの参加者がある程度戻ったようです。また、今年は、複数の新聞社の参加もあり、実際に、日本経済新聞社から、いくつか質問を受けました。
 昨年までの参加者の傾向が、50歳以上が約60%、40歳以上が約80%と高齢化の傾向が顕著となっています。そこで、今年は、「若々しいTRIZ」をテーマにした講演やセッションにより、改善策を探ろうとしていました。いままでの参加者、発表件数、開催場所、社会状況などを記述したトレンドをグラフ化してみました。社会環境変化に対して、TRIZの置かれている立場が読めるのではないかと思います。皆さんは、どう感じるでしょうか。
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 TRIZシンポジウムのデータ・トレンド

 プログラム中の講演は次のようです。招待講演として3件ありました。1つ目は、基調講演で、フランスのDr.Cavallucciから「R&D実践のパラダイム変換に、TRIZはどのように貢献できるか」でした。2つ目は、特別講演で、韓国のDr.Shinから「やさしく、楽しいTRIZ ーTRIZ発明原理の歌」でした。3つ目も、特別講演、日本創造学会の弓野憲一氏から「創造性を教育する」でした。そして、今年も、チュートリヤルとして、TRIZ協会主催ののセミナーが開催されました。ロングランセミナーとして、Dr.Cavallucciのアドバンストセミナーも開催されました。
 なお、シンポジウムでは、例年通り、交流会、多くのグループ討議などのプログラムもあり、徹底的な意見交換できる場も提供されていました。


 基調講演を含む総発表件数は、最終的に40件(ポスター、海外からの発表11件を含む)でした。発表内容は、ハードウェアへの適用事例だけでなく、ソフトウェア、ビジネスなどに対する研究等多岐にわたっています。今回、いままでの復習的発表や継続テーマの発表が目立ったため、インパクトのあるテーマは少ないようだ。一般論や理論ではない純粋な企業での具体的活動事例は、国内2件と海外2件ぐらいに感じられました。

 特筆すべき点は、次の3つです。1つ目は、難解なTRIZの発明原理を覚えやすくする工夫が、韓国eTRIZのJeongho Shin氏とソニーの高木芳徳氏によって紹介されました。韓国eTRIZのJeongho Shin氏は、40の発明原理の8種類をドレミの歌に歌詞をつけて歌うものでした。ソニーの高木芳徳氏は、40の発明原理の数字を原理の意味にイメージした簡単な覚え方を実演されました。
 2つ目は、千葉工大学の小野修一郎氏の「創造の方程式 〜地域産業における創造的人材育成プログラム開発〜」でした。TRIZそのものではありませんが、公的補助金事業として、冊子化とビデオ化されたものです。要旨は次のようなことでした。「創造的な設計解は、「既存の機能の新しい組合せ」と定義できる。創造的な設計解を導出するためには、市場のニーズや自社技術などにもとづく要求R とその方策となる技術T を創造的思考プロセスG( )に入力することで、機能Fn= G(R, T)が得られる。このとき、要求間の矛盾や方策のない要求を創造的思考プロセスG( )にて解決することで、製品の質的変化を促すことができる。」残念だったのは、スライドやビデオの準備の段取りがうまくなく、聞きたいことが聞けなかった点です。その後、冊子とビデオをいただき内容を確認できました。
 3つ目は、弊社(ぷろえんじにあ)から、「山口大学 ”創成デザイン工学”プロジェクトの作り込み段階での工夫ポイント」を発表しました。要旨は次の通りです。「学生の興味、目的意識を高め、創造性発揮のための方法論(マーケティング、QFD、TRIZ など)を体系的に学習している。モチベーションを切り口として、学生の自律的成長に主眼を置いた工夫と効果をまとめた。」観ていただくだければ、概要が掴めると考え、発表スライドを添付しました。大学だけでなく、社員教育の本質的テーマに切り込んだつもりです。
 掴み部分で次のように問いかけました。教育の究極の理想解は何か?それは 『教育をしないことである。』ちょうど10年前、ソニー社員時代の古い手帳を見つけました。そのメモから井深大氏と盛田昭夫氏のソニー創業者2人のメッセージに、セレンディピティ現象が起きました。思えば、新人のころ、井深さんのライフワークの一つであった福祉機器開発のプロジェクトメンバー5人の1人として、一緒に仕事をしたことがあります。そこで、強烈に印象に残った言葉が、「好奇心」と「独創性」というキーワードでした。盛田さんも、創造性を明快に定義していました。「創造性は、すでに存在する情報の処理や分析から出てくるものではない。それは人間の思考、絶え間のない洞察力、そして多くの勇気が必要である。」これらから、モチベーションやコンピテンシーが人財開発の本質だとやっと気がついたわけです。つまり、TRIZなどのスキルだけでは、独創性や創造性を実現できない。コンピテンシーと呼ばれる行動特性が、威力を発揮すると確信したわけです。

 「教育の究極の理想解は?(山口大学 ”創成デザイン工学”プロジェクトの作り込み段階での工夫ポイント)」

 TRIZが他の創造技法と同じようにブームで終わってしまうのか、じわりじわり各方面に浸透していくのかの岐路にさしかかった今日この頃と感じています。やはり、単なるスキルとして捉えてしまうとブームで終わってしまうのではないでしょうか。弊社の発表内容は、教育の本質は何かに立ち返って考えています。スキルをどう扱えば生き残るかをチャレンジしたものです。藁をもつかむ思いで教育のあるべき姿を考えている人や企業には、理想解に近いヒントを提供できているのではないかと思います。なぜなら、2000年ごろから、毎年、約1万人の社員のコンピテンシー(成果に直結する思考・行動特性)データを分析して、成果を出すための能力開発とはどうあるべきかについて研究し続けてきました。弊社ならではのノウハウを有しております。TRIZを成果に結びつける必要性を強く感じている企業のみなさんには、ぜひ相談にのっていただければ幸いです。