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プロフェッショナルの価値と評価 -あなたの年収、他社なら半分?-

 前回は、プロフェッショナルに必要なコンピテンシーとは何かについて述べた。今回は、具体的に、あなたの市場価値を判定していただきたい。実際には、人の能力は金額の多寡ではないが、残念ながら仕事の能力として市場価値が存在することは事実である。これを謙虚に受け入れて、今後どうすればよいかを考えていけばよいのではないだうか。ここで取り上げる市場価値のロジックは、具体的に、プロフェッショナルと呼ばれる人たちや、シニアマネジメント層、中堅技術者などに協力をしていただき、体系化したもので ある。試算してそこから気づきを得ていただきたいと思う。

 あなたの年収、他社なら半分?

「キャリアショック」(高橋俊介著:東洋経済新報社)の中で、著者は、「キャリアショックの先進地である米国のビジネスマンだと転職を意味するジョブチェンジが9〜12回、キャリアチェンジが3〜5回ある。そうすることで、コンピテンシーを高めていく。」という。今後は日本でも30年、40年のサラリーマン人生でキャリアチェンジが2〜3回あることを企業も個人も覚悟する必要がある。それをポジティブに受け入れる時代となっている。前に述べた、社内の他部門への異動や関連会社への転籍などを促進する社内公募も含めると米国並みになることが予測される。

「市場価値」を金額で判断すること自体ナンセンスであるとする意見もあるが、どのような評価基準で評価されているのか複数のサンプルを使い調査した。その結果、客観的データとしてキャリアパスの目標設定および軌道修正のツールができあがった。また、本書で述べてきた市場で必要とされるコンピテンシーが何かの裏付けも把握できた。「市場価値」調査の目的は、次のようであった。

 @研究・技術開発領域での社員の能力の市場価値を数例測定し、テンプレート化する。それを活用し、キャリアパスの目標設定および軌道修正のツールとする。
 A市場の求める人材像から、コンピテンシー項目を抽出し変換する。
 B新しい専門職制度構築の価値基準の一つとして、市場での報酬との整合性を図る。

 市場価値評価のアルゴリズムとしては、大きく分けると2つに分類できる。1つ目の算定アルゴリズムは、現在の報酬を基準として専門スキル、コンピテンシー(行動特性)、資格、役割などをプラス要因およびマイナス要因で係数を掛け合わせて算出する方法である。2つ目は、年齢や企業特性や役職などをベースにしたモデル給与を決めておき、専門や語学スキル、コンピテンシー(行動特性)、資格、技術分野の市場のニーズをプラス要因およびマイナス要因で係数を掛け合わせて算出する方法である。それらは、アルゴリズムこそ違え現時点のエンジニアの市場価値を的確に表していたように思われる。

 最近、多くの企業で成果主義を声高々にうたっているが、日本における雇用システムは、年功序列を脱しきれてはいない。それらを加味して“あるべき姿をめざした評価システム”を図の市場価値による報酬設定例として提案してみた。ここでは、モデル給与を年齢ではなく業務経験としてその幅は小さく設定している。業務経験年数を設定した狙いは、反面教師としての失敗経験や先輩諸氏から受け継がれているノウハウを評価した。キャリア・コンピテンシー要因には、貢献利益を用いできるだけ数値化する。この貢献利益は、それぞれの企業に合わせて運用することになるであろう。ここでは、係数1.0を給与+αレベル、係数1.2を給与の20倍レベル、係数1.5を給与の50倍レベルと定義しておく。個人の属性的なスキルは、語学と保有資格の2つだけとした。この意味は、資格などを取得した結果を評価するのではなく、“難しい資格などに挑戦してそれを達成するプロセス”を評価する。これがコンピテンシーの正体である。さらに、技術の市場ニーズや業界特性などを加味する。それらを掛け合わせると250万円〜3500万円までの幅で評価が可能で、企業もエンジニアも納得できる透明性のある報酬体系となるようである。