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超高真空

1 解説
 真空の分野では、圧力範囲によって真空領域を区切り、大気圧に近い方から『低真空』『中真空』『高真空』『超高真空』『極高真空』と呼んでいる。この中で、超高真空は、10-5〜10-10 Pa(10-6〜10-9 とした例もある)レベルをいっている。
 応用分野として、半導体製造プロセスでは、H2O、CO などのガス分子が膜質に大きく影響をおよぼす場合に超高真空がある。具体的には、分子線エピタキシー装置、スパッタ装置、CVD 装置などに用いられる。

2 所見
 超高真空は実用化されて、成熟してきた技術であるが、最近では、極高真空に技術者、研究者の興味がうつっている。では、極高真空が実用化されることで開かれる世界は何だろうか。原子サイズの加工が可能となり、半導体等の微細化を促進するのである。そのためには、真空用材料の改質や材料の高純度化、圧力計測法の開発、イオンカウンティング法の開発等が重要である。
 例えば、真空中で動作させるモータなどの場合、大きな課題が2つある。ドライブの特性が真空と課せられた要求の影響を受けることと、真空条件の品質がドライブによって悪化する可能性である。真空中または非常に低い気圧中で、熱を対流放熱させるだけの空気がない。熱は熱伝達で放熱することしかできない。モータ内の一般的な温度差を想定すると、放射による放熱は少なく無視できるが、モータのデータは、大気中での対流による放熱を想定した仕様になっている。真空中での動作では対流による冷却は小さく、モータ内部で発生する高温が許容範囲を超えるリスクが高くなる。ベアリングやコミュテータの潤滑剤の蒸発は、製品サービス寿命を著しく悪化させる。さらに、グラファイトブラシでの整流の際、コミュテータの酸化銅被膜を適正に形成するために必要な湿度や酸素が存在しなくなってしまう。その結果、これらのモータは、サービス寿命を著しく低下させる。潤滑剤、プラスチック、表面塗装、接着剤等のガスは真空を汚染する。これは、HV以上の真空度(半導体製造)を要求する用途では特に重要となる。